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好かれようとしない
評価:
朝倉 かすみ
講談社
コメント:恋に不器用な女性たちへ。

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いまどきめずらしい、うぶな少女、風吹。
メイクもオシャレもよくわからない、男性経験は好きでもない男との一度きりだけ。
すぐ真っ赤になる顔がコンプレックスで、小さい頃のあだ名は「ゆげ」。
そんな風吹が恋をしたのは、ベリーダンスの先生と不倫をしている鍵屋だった。

朝倉かすみにしてはめずらしく(?)爽やかな物語。
恋とはなんぞや、を語る、女子的「あるある」「わかるー」がちりばめられた話。

主人公風吹の大家のおばあちゃんがとてもいい。
齢70を越えても、彼女の仕草は「女」である。
そして格言は彼女の口から多くが語られる。

「あれこれ思うは人の心、ふっと思うは神の心」
「自分を愛しいと思えない女になにかを期待するひとなんて、いない」
そして、「好かれようとしないこと」

男の人には申し訳ないけれど、やっぱり男って単純でおばかさんだと思う。
「彼を振り向かせるテクニック」なんて腐るほどあって、「彼を振り向かせるメイク術」なんてものもあって、
なりふりかまわなければ、自分の見た目やら相手のステータスやら諸々を妥当な線で考慮すれば、「彼」を「振り向かせる」ことはさほど難しいことじゃないと思う。
でもその彼のことがほんとうに好きで、その彼にほんとうに自分の全てを好きになってもらいたいと思ったら、そういうテクニックではどうしようもない。
恋に落ちるのは、「ふっ」と思ってもらうしかないからだ。

やっぱり恋は、「する」ものではなくって、「落ちる」、もしくは「出会う」という言葉がしっくりくる。
赤い糸や運命なんて言葉は恥ずかしいけど、恋に落ちる人には落ちる、振られる人には振られる、そういうことはもう決まってるんじゃないかなあと思う。
だけど仲良くなるための、お互いを知り合うためのきっかけを作る勇気は必要だ。
ということを風吹に教わった。
やっぱりすれ違っただけじゃ恋なんてうまれないもの。




22:58 | あ行(朝倉かすみ) | comments(0) | trackbacks(0)
KYOKO
評価:
村上 龍
集英社
コメント:皆がキョウコに恋をする。

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幼い頃にダンスを教えてくれたホセを探すため、キョウコはニューヨークへと旅立つ。
ホセの足取りをおってたどりついた先は、エイズ患者のためのホスピタルだった。

魅力的な女を中心とした物語、というのは小説に限らず映画なんかでも数多くみられる。
どんな風に魅力的か、というのはその作品によってまちまちだろうが、キョウコの場合は割りと正統派だ。
付加価値といえば、ダンスが上手いということ。
かわいらしい顔。
白い肌。
長い手足。
意思の強そうな瞳。
時々見せる悲しげな表情。
そんなキョウコに少なからずのオッサンたちが魅了され、無償でキョウコのために働いてしまう。

そんな魅力的な主人公に読者である私もやられてしまう場合もあるけれども、今回はイマイチ。
著者が村上龍だということに対する変な構えもあったかもしれないし、同じ日本人なのに日本人離れした白さや手足の長さを誇るキョウコに嫉妬したのかもしれない。

キョウコはイマイチ、だったものの、物語はなかなか良かったと思う。
キューバのダンスが物語りに彩りを与えているし、語り手が次々と変わるのでさらりと読みこせる。
終わり方もとても爽やかでいい。

ラストの、未来についてキョウコが思う、
「途上にいて、しかもそれを楽しんでいるとき、わたしは未来を手にすることができる」
という言葉になるほどな、と思った。

21:37 | ま行(村上龍) | comments(0) | trackbacks(0)
猫鳴り
評価:
沼田 まほかる
双葉社
コメント:沼田まほかる、猫を書く。

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捨て猫モンちゃんと、彼に関わった3人の人間のお話。

相変わらず沼田まほかるは、人の心のどろどろとした部分の描写が非常にうまい。
あああああもうそれ以上書かないで説明しないで分かってるからあああああ
と叫びだしたくなる。

人には見られたくないとついつい思ってしまう、そして隠してしまう気持ち。
しかしそんな気持ちが「後ろめたいこと」だなんて、誰が決めたのだろう?
心の隅々まで「綺麗」(社会にはびこる観念としての)な人間なんて、この世には存在しないかもしれないのに。

そんな風に必死に隠そうとしている心を、全て見透かしているかのように思わされるのが、猫という生き物。
全てを知っているようで初めは恐ろしいが、知られているということで逆に心が解放されて楽になるということもあるのかもしれない。

文章はうまい、と思うが、どうやって楽しんだらいいのかよくわからない本だった。
21:20 | ま行(沼田まほかる) | comments(0) | trackbacks(0)
彼女がその名を知らない鳥たち
評価:
沼田 まほかる
幻冬舎
コメント:人が狂える理由は、愛以外にないのかもしれない。

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昔の彼・黒崎を忘れられない主人公の十和子は、寂しさから15歳年上の陣冶と暮らしている。
下品で貧相で下劣で卑屈で・・・激しい嫌悪感を陣冶に抱きながらも離れられない十和子だが、デパートの時計売り場の係長・水島と不倫関係に陥る。
その直後から水島の周りで不可解なことが立て続けに起こり、十和子は陣冶の仕業ではないかと疑う。
十和子を手放したくないあまりに、狂ってしまう陣冶。哀れな陣冶。
そしてラストに示される、衝撃的な愛の形。


沼田まほかるは怖い。
あ、と気がついたときにはもう底なし沼にずっぷりとはまっていて抜け出せなくなる。
本を閉じたあともしばらくはこの陰鬱とした気持ちから抜け出せそうにない。
沼田まほかるが差し出す愛の形は、ひどくおいびつな形に歪んで狂気じみている、にもかかわらず、普段は隠されている部分から「共感」をかすめとっていく。
沼田まほかるの本を「つまらない」「気持ち悪い」と放り出すことが出来るならば、それはまだまだ若いことの証か、よっぽどの幸せ者か、はたまたぶりっ子か。
彼女の本が売れているという事実になんだか胸をなでおろす思いだ。

全員、狂っている。
十和子も、陣冶も、黒崎も、水島も、姉の美鈴と、もしかしたらその夫の野々山も。
(唯一の光がカヨかもしれない。カヨが出てくるシーンだけが温かい光をはなっていて印象深い)
しかし、狂気を含まない愛など有り得るのだろうか、と思い、「愛は素晴らしい」などと声高に叫んだりしない作者のことが、イイナ、と思ってしまうのである。



22:11 | ま行(沼田まほかる) | comments(0) | trackbacks(0)
ハゴロモ
評価:
よしもと ばなな
新潮社
コメント:人生の休息タイムに。

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短いか長いかは分からないけど、人生に疲れたら休んでもいいじゃないか。
ふるさとにかえってきた、8年の愛人生活に終止符をうたれた主人公。
そこで出会ったラーメン屋を営む青年と、夫をなくして活力を失ってしまったその母親。
みんながゆっくりと、しかし確実に生命力を取り戻していく過程を描いた話。
やっぱり少し(?)不思議な出来事の力を借りながら。
22:49 | や行(よしもとばなな) | comments(0) | trackbacks(0)
氷菓
評価:
米澤 穂信
角川書店(角川グループパブリッシング)
コメント:米澤穂信デビュー作。

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こんなどきゅんな表紙だったら買わなかったな・・
持ってるのは学校の階段の表紙。

本格ミステリ小説家なのかと思いきや、ものすごーく軽い学園推理風物語。
確かにアニメ向きかも。
あまり好みではなかった。
軽すぎて。
22:39 | や行(米澤穂信) | comments(0) | trackbacks(0)
評価:
有馬 頼義,猪熊 弦一郎,井伏 鱒二,大佛 次郎,尾高京子,ほか
中央公論新社
コメント:猫にまつわる話。

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JUGEMテーマ:読書
 
ちなみに「犬」は吉田篤弘氏、こちらの「猫」は奥さんの担当。

こちらも井伏鱒二、谷崎潤一郎、柳田國男などなど早々たる顔ぶれ。

面白いのはやはりというかなんというか、犬で語られる話は「犬と人間」という構図なのに、猫の話のときには「猫」という感じがする。
猫という動物が人と一線を画しているがゆえに、猫を語るときには、人から見た猫の世界を描写するという形になってしまうのかもしれない。
「私は猫に飼われている」とさえ語られているのだから。

22:29 | か行(クラフト・エヴィング商會) | comments(0) | trackbacks(0)
評価:
幸田文,川端康成,志賀直哉,伊藤整,長谷川如是閑,網野菊,林芙美子,阿部知二,徳川夢聲
中央公論新社
コメント:犬のでてくる話。

JUGEMテーマ:読書
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犬が出てくる随筆集。
川端康成、志賀直哉などの文豪たちが、犬との生活を語る。

昔の人の犬に対する考え方というのは今とだいぶ違うのが面白い。
人生のパートナーというよりは、玄関に防犯カメラをつけとくか、といった様相。

しかしやはり、生き物が生き物と一緒に暮らすということは、もうどうしてもドラマが生まれざるをえないわけである。
どんな話であれそれはやはり興味深いものだ。

こういうのは、なかなか無い本だ。
装丁がとても可愛い。
読み返すことはないかもしれないが、なんとなく傍らにおいておきたいなと思う本。
22:20 | か行(クラフト・エヴィング商會) | comments(0) | trackbacks(0)
1Q84
評価:
村上 春樹
新潮社
コメント:月が2つある世界、それを青豆は「1Q84」と名づけた。1Q84の世界で立て続けに起こる不可思議な出来事。その中で青豆は自分の存在の意味を見つけていく。ハードボイルド、そして揺ぎ無い、愛の物語。

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レビューはBOOK1前編に書いているが、全読後の感想になります。


面白すぎで6巻一気に読んでしまった。
若干後悔しているが、また今度ゆっくりと読み返したいと思う。

単行本が出版されたとき、1Q84を読んだ何人かの知り合いに感想を聞くと、
多くの答えは 「なんとういか、なんとも言えないけど村上春樹って感じ」 というものだった。
しかし実際に読んでみて、私は1Q84は今までの村上春樹作品とはだいぶカラーの違うものだという感じを受けた。
灰汁が丁寧にすくわれているというか。
出てくるキャラクターもそうだし、語り口調も新しい。文章は今までの何倍にも増して洗練されているし、選び出す単語のひとつひとつやその並べ方が凄すぎて読んでる最中に呻ってしまうほど。
これほどまでの人でもまだまだ成熟というものをしていくのだなあと驚かされる。
センスや才能というふつうだったらプラスの要素になる言葉が、1Q84でつむがれる言葉を前にするとひどく滑稽でまぬけで的外れな言葉に思える。
センスだけでこんな文章を作り出せるわけがないだろうがあほめ。という具合。

物語についての感想を語ることはなかなか出来ない。
語彙力も表現力も足りなさすぎる。
そして多くの謎は残されたままのように感じる。
なぜリトル・ピープルのことが文字になり世間に知らされてはならなかったのか。
そうなったことにより世界はどう変わったのか。
教団は声を聞くことで何をしていたのか?
青豆と天吾が降り立った新しい世界には、さきがけやタマルや、1Q84の世界の人々は存在するのか?したとして、1Q84の世界での出来事と青豆たちとの関係はどうなっているのか・・
読み終えても気になることはたくさんある。
もし続きがあったとしても、疲労を感じることなく読み続けられただろう。

しかし完結を迎えた、というところに、放置された謎は謎のままでいいものであり、答えはすでに提示されきったということなのだと思っている。
つまり、「説明が必要なことは、説明されても分からない」ということなのではないか。

個人的には愛の物語だと思っている。
天吾の父が天吾に言ったように、私という存在は「何ものでもない」。
「親の子供」という存在でもない。
私は私であって、それを決定するのは自分自身でしかありえない。
そうでさえあれば、自分が自分でいる限り、どの世界で生きていようとも、それが月や太陽がふたつある世界であろうとも、たいしたことではないということなのだろう。
だってもしかしたら、本当の世界には月はふたつ存在しているのかもしれないのだし。




21:40 | ま行(村上春樹) | comments(0) | trackbacks(0)

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