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エロマンガ島の三人
評価:
長嶋 有
文藝春秋
コメント:エロマンガ島でエロマンガを読む。そんな馬鹿げたミッションを遂行する、実話を元ネタにしたショートストーリー。

JUGEMテーマ:小説全般
JUGEMテーマ:読書
 
この作者はものすごく短編を書くのがうまい人だと思う。

主人公はゲーム雑誌の編集者。
エロマンガ島でエロマンガを読むという企画を冗談で出したら通ってしまった。
後輩の久保田(巨漢・ゲームおたく)と、突然の父の不幸で来られなくなった井沢さんのかわりにやってきた見知らぬ男日置と、馬鹿げた度に怒りをあらわにした彼女をおいてきてしまった主人公、佐藤の3人の、何もないような、何でもあるような島で過ごした数日間を描く。

その他、崩壊した世界に生き残った男女3人、少年ひとりのショート・ストーリー
かけおち先でなぜかクラブをふることになった、真夜中のゴルフ場の不思議な出来事。
HMという名前で届いた1通のメールをきっかけに、過去の女たちのことを振り返る男の話。
そして、「エロマンガ島」の日置の話を添えて、本書は幕を閉じる。

日常と非日常の境目が曖昧で、ちょうどいいバランスで交じり合っているのが心地よい。
短編ならではの、読後の余韻がくせになりそう。


目次

エロマンガ島の3人 / 女神の石 / アルバトロスの夜 / ケージ、アンプル、箱 /  青色LED



22:40 | な行(中嶋有) | comments(0) | trackbacks(0)
「気だてのいいひと」宣言
評価:
香山 リカ
東京書籍
コメント:ものは言いよう、考えよう。

JUGEMテーマ:読書
 
香山リカが良い、という友達にもらった本。

「気だてのいいひと」とは一体どういう人なんだい、っていうことなんだけど
ようは「香山さんのところにくる欝患者」のことなんだよね。

うつになったりする性格の人って、気が弱かったり、人に気をつかったり、
自分の意見を言えなかったり、考え込んでしまったり。
人の上に立つことが良いとされる今の社会に適応できず、つまはじきにされてしまった人たち。

そういう人のことを、「気だてがいい」と表現し、だからそのままでいいんですよ、自信を持って、という。
いわばうつ患者励まし本。
でもそういう性格は直せなくても、そのままでいいといわれて自信を持てば
社会の中でうまく生きていけるようになるというものでもない。

「気だてのいいひと」のカテゴリーに住まない人間が、上から目線でそれを賛辞している内容だと感じられるのは、私の性格がひねているからなんだよなあ、と思う。

22:28 | 実用書 | comments(0) | trackbacks(0)
新世界より
評価:
貴志 祐介
講談社
コメント:千年後の世界に巻き起こる、新感覚ホラーSF!

JUGEMテーマ:読書
JUGEMテーマ:小説全般
 
貴志さん久々ー!
ホラー苦手な私にホラー小説を買わせてしまうだけの筆力を持つ彼。
ああ、ホラーじゃないものを書いてほしい・・・
青の炎みたいなテイストを・・・
という私の願いがようやく叶い嬉しい限りです。
まあホラーの要素ももちろんあるんだけど。

舞台は千年後の日本、愛する地元茨城県。まあこの時代は県なんてなくなってますが。
数百年前、呪力を使えるようになった人間は、能力者と非能力者の間で大きな戦争、殺し合いが行われ、結果日本と日本人は壊滅。最終的に戦いに勝った能力者が、過去の過ちを繰り返すまいとして様々な試行錯誤の上に作り上げられた社会システム。
しかしそれも、割れたつぼを修復しても隙間から水がこぼれだすように、いつ壊れてもおかしくない危険をはらんでいたのだ。

決して入ってはいけないと言われた土地に足を踏み入れた少年少女、そこでのある生物との遭遇が、彼らの運命を大きく狂わせることになる。
そして10年の時がたち、人類は再び大きな危機にさらされることになり、かつての少年少女は、人類を守るため、命を賭して悪鬼に立ち向かうことを決意する。


分厚い文庫が3冊。
しかし一気に読破!
構想がすごいしっかりしてるのに感服。
そんでやっぱ怖いとこは怖い。
そして最終的には人間としての生きかたを考えさせられる問題提起。
激しく同意な最後の一文。
あますところなく楽しませていただきました!



00:03 | か行(貴志祐介) | comments(0) | trackbacks(0)
ポルトベーロの魔女
評価:
パウロ・コエーリョ
角川書店(角川グループパブリッシング)
コメント:現代に生きる魔女と、魔女を求める人々の心のお話。

JUGEMテーマ:小説全般
JUGEMテーマ:読書
 
今回も表紙が可愛い。満足。

いつもと感じが違うなあーと思ったら、訳者が違う。
ラフな感じ。

「魔女」と呼ばれた、今は亡き一人の女性について、何者かが様々な人にしたインタビューを書き留めている、という設定で物語りは進む。
離婚を経てキリスト教に「見捨てられた」と感じる彼女が、本当の信仰とはなにか、自らにひそむ母神の力を目覚めさせることにより、人々の注目を集め、多大なる崇拝と批判を同時に浴びるようになるまでを描く。

あるひとつのはっきりとした宗教を持たない私には、大きな共感を感じることはないのに、こうしてまた宗教色の強い彼の作品を手にとってしまうのはいつもながらに不思議なことである。
今回のテーマは、キリスト教の教えについてではなく、キリスト教のあり方そのものについて提議をなしているようなところが面白かった。

23:44 | 海外(パウロ・コエーリョ) | comments(0) | trackbacks(0)
大人も子どももわかるイスラム世界の「大疑問」
JUGEMテーマ:読書
 
池上さんって良い人なんだろうなあー。っていう文章の感じ。
とてもわかりやすい本でした。
あまり深いところまで追求せず、ほどよくざっくり、という本ではありますが
普段なにげなく聞き過ごしていることなどを再確認できました。
個人的に興味深かったのは、タリバンがなぜ生まれたかという部分。
またの機会に文献を探してみたいものです。
23:39 | 実用書 | comments(0) | trackbacks(0)
2時間でおさらいできる日本史
JUGEMテーマ:読書
 

表紙が可愛かったのと、日本史知らなさすぎてやばい?かと思って購入。

ざっくりすぎて逆に分からなかった。
出来事がつながらない。
数千年を2時間で説明しようっていうんだから当たり前か。
歴史の面白みってディテールにあるのね、と再確認。


22:15 | 実用書 | comments(0) | trackbacks(0)
カシオペアの丘で
評価:
重松 清
講談社
コメント:幼馴染のミッチョ、トシ、シュン、ユウちゃん。カシオペアを見上げながら夢を語り合ったときから30年、不思議な縁が彼らを再び結びつける。ゆるすこと、ゆるされることを描いた物語。

JUGEMテーマ:読書
JUGEMテーマ:小説全般
 
幼い頃、一緒に星を見上げていた4人。
そのエピソードから物語りは30年という時を飛び越え、その間に起こった「何かたち」を匂わせながら話は進んでいく。

トシと結婚したミッチョ。
足が動かなくなっているトシ。
故郷に寄り付かなくなったシュンはガンに侵される。
一見変わらないようにみえる唯1人の人物、ユウちゃん。
さらに妻の浮気相手に娘を殺された川原さんや、車でおばあちゃんを撥ねてから運転が出来なくなったミウさん、鉱炭事故のことを何十年も心の内で謝り続けているシュンのお祖父さん。全員が心に傷を負っている。

この作品は彼らが傷に向き合い、自分を、相手を許してあげるまでの過程を描く。

最後のユウちゃんの語りの部分が良かった。
逆転勝利ばんざいっていうのが良かった。
過去に色んなことがあっても、その部分はかえられなくても、いまと未来が素晴らしいものなら、どんな過去があったっていいじゃないか、と。
この物語のように、過去の全てを受け入れて許して許されて、はいスッキリ!という風になるのはむずかしいことだと思うから、少しうらやましく、あと15年後には私もこんな風になれるだろうかと不安になったりもした。


感動作、である。
ただちょっと重松清は綺麗すぎる、と思うようになったのは、
また私の本の好みが変わってきているのかなあ。

21:09 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
ティンブクトゥ
評価:
ポール オースター
新潮社
コメント:主人のウィリーを亡くしたミスター・ビーンズの哲学と冒険の物語。

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JUGEMテーマ:読書
 

訳者あとがきの言葉を借りれば、「shaggy dog story」(むさくるしい犬の物語)という言葉が英語にあり、“話し手には面白くても聞き手には退屈な長話、最後でわっと笑わせるかと思いきやひどく冴えないオチで終わる話”という意味で使われるのだという。
本編を読み終わってからこのあとがきを読んだので、実際にミスター・ボーンが「shaggy dog」だという記述があったかどうかは定かではないが、彼の外見がむさくるしい部類にあったという表現はなされていたと思う。

作者はshaggy dogを主人公にして、shaggy dog storyを描き出そうとしたのだろうか。とすればこの物語は、作者の個人的事情に大きく立ち入ったものなのかもしれない。

ともかくもこの作品が何か特別に大きな感動や悲しみや笑いといった感情を呼び起こす類のものではない、shaggy dog story的なものであるとしても、どこか魅力的であったことには間違いない。

ウィリーとミスター・ボーンズの関係において、犬と人間という種を超えた繋がりがあるのが良い。
彼が死んでから、ミスター・ボーンズは「犬」として扱われ、「犬」としての生を全うしようとするのだが、自分でも気がつかないほどの違和感に苦しめられている。
物語を終える頃に気がつくのは、自分がミスター・ボーンズを、主人を失った哀れな野良犬としてではなく、自分のことを理解してくれていたただ1人の友人を失った悲しみに暮れる主人公として彼に共感を抱いているということだった。


可愛らしい表紙と、声に出してつぶやくたくなる題名。
本棚にそっと忍ばせておきたい1冊。

16:38 | 海外(ポール・オースター) | comments(0) | trackbacks(0)
サンカクカンケイ
評価:
小手鞠 るい
新潮社
コメント:強引で傲慢な龍也。幼馴染で、優しくずっとそばにいてくれた俊輔。「恋」とは一体なんなのか。それが見えたとき、アカネは自分の進む答えを知る。

JUGEMテーマ:読書
JUGEMテーマ:小説全般
 
好きで好きで、溺れるような恋をした龍也。
恋に破れ、それでも忘れられずにいるアカネに、自分がそばにいると伝える俊輔。

ああなんてベタベタなサンカクカンケイ!
「龍也」がオラオラ系で「俊輔」が癒し系とか、もう名前の決め方までベタ。
それなのに何故か面白い小手鞠るい。
うーん不思議だ。

きっと私の他にも多くの人が思っているはずなのだけれど、
私にとってもこれは「私の物語」。
そう、冒頭に書いてあるとおり、これは「愛する人を失った全ての人に」捧げられた物語なのだ。
痛みの箱をひらいて、さよならサンカクいたしましょう。

19:27 | か行(小手鞠るい) | comments(0) | trackbacks(0)
雪屋のロッスさん
評価:
いしい しんじ
新潮社
コメント:不思議で、あたたかく、せつなく、そしてどこか暗く深く怖い。心に沁みる31の物語。

JUGEMテーマ:小説全般
JUGEMテーマ:読書
 
びしっびしですねー。
研ぎ澄まされてますねー。
やさしさやあたたかさの中に、怖さや毒を入れることによって
ますます温かみを増して感じられるようです。

いしいしんじという作者は、この世に存在するどんなものも主人公にして物語をつむげる人だ。
それがうなぎ女であれ、道路であれ、ゴミバケツであれ、ダッチワイフであれ。
そして現実には存在しない町で、存在しない仕事をする人の物語を描くときにも、絶対的なリアリティと存在感を感じさせる。
彼はきっと、この世の全てのものに等しい価値があると信じているのだと思う。
それにすごく安心して、嬉しくて、ちょっと泣きそうになる。

31ある物語のうち、どれが好きかなーと思ってぱらぱらと読み返していたら、
とうてい1つに選びきれるものなんかではなかった。

永久保存版入りです。

18:42 | あ行(いしいしんじ) | comments(0) | trackbacks(0)

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