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評価:
重松 清
新潮社
コメント:ツヨシの学校に転校生がやって来た。頭のてっぺんをチョンマゲに結んで、得意の一輪車でいじめっこを追い返し、夢は学校の番長になることだと言う女の子、マコト。2人が過ごした1年間の、短くとも忘れがたい友情の物語。
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やっぱり重松清は最高!
「弱気をたすけ、強気をくじく」番長、マコト。
「弱い者いじめを見過ごして逃げるような子は、大っ嫌い!」
とマコトに言われたツヨシ。
いじめをしていなくても、自分に災いがふりかかるのを恐れてじっとしている。
それが仕方のないことだ、という考えから、そうじゃない、違うんだ、それじゃ駄目なんだ、
というマコトに背中を押されて、強い心を手にいれていく。
父を亡くして、体の動かない祖母の世話を任され、
少し早く大人にならなくてはいけなかったマコト。
「悲しくなったらくちぶえを吹くんだ」という亡き父の言葉を思い出し、
マコトは高い木のうえでくちぶえを吹く。
舞台は昭和の香りがする小学校であっても
力の強い者が力の弱い者を虐げ、力の弱い者はそれに耐えるしかないという構図は
人間社会の大から小からのこと全てに見られること。
だから番長が必要なんだなあ
力が強く、弱い者を助ける番長が。
さらにこの本の余韻をとても素敵なものにしているのは、
エピローグとプロローグにあるだろうな。
お話なんだろうけど、マコトは私たちの周りにもいるかもしれない、という
象徴的な存在として語っているのだろうけど、
それでももしかしたら、「ほんとうの」マコトが、この本を読んで重松さんに会いに行く
なんてことがあったら、なーんてことを妄想してしまったりもして。
そんなことが起こっていたらなんて素敵なんだろう!
ということも含めての作品だと思うので
ほんとうのことは知らなくていいな。