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評価:
ポール ギャリコ
新潮社
コメント:生まれ、苦しみや幸せを経験し、そしていつか誰しもが天に召される。偉大なるこの世界に生まれたちっぽけな自分が、この世に生を受けた意味とはなんなのか。命あるもの全ての人生の縮図を、雪のひとひらに託して物語は進んでゆく。
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まさに、人生の縮図を描いた作品。
主人公が「雪のひとひら」という風に、一見風変わりではあるが、
私たち人間が感じる雪のひとひら、また雨のひとしずくのちっぽけさは
宇宙という大きな生命体のもとに消しされられてしまう。
ある日生まれた雪のひとひらは、やがて川の一部となり、
そこで人生の伴侶と出会い子供を設ける。
ひとりではないことの幸福感を知り、それゆえ
伴侶の死によって耐え難い孤独というものも知ることになる。
人生の危機を乗り越え、また楽しみも味わい、
立派にそだてあげた子供たちもその手から離れて、
彼女はゆっくりと死へと向かってゆく。
死んでゆく命に生まれる意味はあるのか。
そして一体誰がこの命を生み、また死へと導くのか。
彼女は人生を通してこの問いを投げかけ続け、
死を目前にして前者の疑問にのみ答えを見出す。
「なぜ生まれ、生きてゆくのか」
それは人間であれば誰しもが一度はぶつかったことのある問いかけかもしれない。
私も一度は、この本に書かれたのと同じ答えを見出し、
そのために生きようとしたことがあったような気がする。
どの生命もが、ここに存在するものの全てが、それ自体では生きていけないように
出来ているから。
しかしそう直接的に、そして断定的に読者に答えを示す物語を
私は好まない。
さらに雪のひとひらが出した答えは、特に私にとって目新しいものではなく、
それゆえ読後も特にこの本から自分が受け取ったものは
ないように思えた。
しかし読者の中には、この答えを前に、新しい世界が開けたという人も
いるのかもしれない。
誰かが生きてゆくための手助けになることもあるのかもしれない。
特に専業主婦をしている女性は、手にとる価値があるかも。