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評価:
貫井 徳郎
東京創元社
(1999-03)
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ジャケ&タイトル買い。古本屋にて。
連続幼女誘拐事件を追う刑事佐伯と、娘を亡くした悲しみに耐え切れなくなった松本が
宗教に依存し、やがて娘を復活すべく黒魔術に手を出していくさまの
二つが交差しながらこの物語はすすむ。
さすがに宗教、黒魔術というテーマはついていけなかったが、
実際にそのようにのめりこんでいる人もいるのだから、必ずしも非現実的ではないし
共感できなかったからといってこの小説が駄作というわけではない。
むしろこの小説は素晴らしい。
そこに張り巡らされる伏線が、実に巧み。
正直、この小説に仕掛けられた「大どんでん返し」には、
完全とは言わないまでも途中から薄々気がついた。
それでもあたしがこの本をいい、と思うのはなんでだかよくわからない。
本の批評って苦手だ。
人でも本でも映画でも、雰囲気を感じて好き嫌いを決めるからかな。
「慟哭」って言葉も好き。
張り裂けそうな悲しみ、やるせなさ、憎しみ、叫びたいけど叫べない、
そんな感情を全部表している感じで。
この本の中にたった一度だけある「慟哭」という言葉、
タイトルにしているだけあってどこでどのように使うかっていうのはすごく重要。
その点、気に入りました。
読みたい、と思わせてくれる作者が見つかるとうきうきする。