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評価:
朝倉 かすみ
講談社
コメント:恋に不器用な女性たちへ。
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いまどきめずらしい、うぶな少女、風吹。
メイクもオシャレもよくわからない、男性経験は好きでもない男との一度きりだけ。
すぐ真っ赤になる顔がコンプレックスで、小さい頃のあだ名は「ゆげ」。
そんな風吹が恋をしたのは、ベリーダンスの先生と不倫をしている鍵屋だった。
朝倉かすみにしてはめずらしく(?)爽やかな物語。
恋とはなんぞや、を語る、女子的「あるある」「わかるー」がちりばめられた話。
主人公風吹の大家のおばあちゃんがとてもいい。
齢70を越えても、彼女の仕草は「女」である。
そして格言は彼女の口から多くが語られる。
「あれこれ思うは人の心、ふっと思うは神の心」
「自分を愛しいと思えない女になにかを期待するひとなんて、いない」
そして、「好かれようとしないこと」
男の人には申し訳ないけれど、やっぱり男って単純でおばかさんだと思う。
「彼を振り向かせるテクニック」なんて腐るほどあって、「彼を振り向かせるメイク術」なんてものもあって、
なりふりかまわなければ、自分の見た目やら相手のステータスやら諸々を妥当な線で考慮すれば、「彼」を「振り向かせる」ことはさほど難しいことじゃないと思う。
でもその彼のことがほんとうに好きで、その彼にほんとうに自分の全てを好きになってもらいたいと思ったら、そういうテクニックではどうしようもない。
恋に落ちるのは、「ふっ」と思ってもらうしかないからだ。
やっぱり恋は、「する」ものではなくって、「落ちる」、もしくは「出会う」という言葉がしっくりくる。
赤い糸や運命なんて言葉は恥ずかしいけど、恋に落ちる人には落ちる、振られる人には振られる、そういうことはもう決まってるんじゃないかなあと思う。
だけど仲良くなるための、お互いを知り合うためのきっかけを作る勇気は必要だ。
ということを風吹に教わった。
やっぱりすれ違っただけじゃ恋なんてうまれないもの。