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評価:
小手鞠 るい
ポプラ社
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イラストレーターをしている木の葉のもとに、ある日電話がかかってくる。
それは、昔の恋人であるアラシが、自分の物語に木の葉に挿絵をつけて欲しいと言っている、という編集者からの電話だった。
木の葉の胸に、五年前に別れたアラシとの思い出が甦る。
そうして、アラシが書いた物語が、一章ごとにファックスで届けられる。
遊牧民と、泥棒猫の話。
その物語は、遠い日に木の葉とアラシが過ごした日々に重なっていく。
最終章を残して、アラシは消えてしまう。
長い長い時を経て紡がれる、愛の物語です。
小手鞠さん、初めて目にする名前でした。
もちろん本屋さんにだって「小手鞠るい」なんてコーナーはなく、
たまたま、それも本棚の隅っこのほうに、
それでも平積みで並べられていました。
恋愛小説はあまり読まないのだけれど、
なんとなく吉本ばなな的雰囲気を感じたのと、
小手鞠、という名前の素敵さと、題名と表紙の透明感に魅かれて
買ってきました。
こういう出会いってほんとうに胸が騒ぐ。
だから私は本が好き。
本屋が好き。
アラシの書く泥棒猫と遊牧民の物語、
何もなくても、ただ読んでるだけで泣きそうになる。
ほんとうに絵本にしてほしいくらいだ。
恐らくこの本を読んだ人の中で論議されるのは、
「泥棒猫は遊牧民から何を盗んでいったのか」
だと思う。
私はその答えを見つけました。
例え筆者の意図と違っていたとしても、
これは私の中では絶対に正解。
この答えを見つけたとき、この物語が何倍も美しくみえた。
ちなみに私の答えは、シンプルな単語で、
たしかそのまま本文にも何度か記載されていたと思う。
もう喉まででかかっているのだけれども、
こういうところでそれを言うのは、
殺されても文句を言えないくらいのタブー。
誰かと「いっせーの」で答えあわせをして、
それがぴったり合ったりなんかしたら
すごい幸せかもしれない。