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評価:
パウロ コエーリョ
角川書店
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最近パウロ・コエーリョの本に疲れ気味だったのですが、
こーれは良かった!というか読みやすかったですね。
やっぱり全体を通して宗教色が濃いパウロ作品なので、
無宗教日本人の私にとって「入り込めない」と感じる場面が多々あり、
それが占める割合が多い作品は「面白い」と感じることが難しかった。
でもプリン嬢は、「善と悪」というテーマで、日々生活の中でしみじみと考えさせられる事柄でもあったことが幸いしたのか、心に響く作品になった。
舞台は小さな小さな山間の村、ヴィスコス。母親を亡くしてみなしごになったプリン嬢は、とある小さなバーで働いていました。皆が生きていくことに夢中で、大きな変化の起こらない、素朴で穏やかな村。
ところが、ある日村にやってきた旅人が、村に大きな波紋を呼び起こすこととなります。
彼は妻と子供を殺され、人の「善」が信じられなくなり、ある実験を行おうと考えたのです。それは、「1週間以内にひとつの死体が出れば、金塊を村に差し出す」という取引でした。さらに彼は、11個ある金塊のうち、ひとつをプリン嬢の目の前で山の中に埋めます。金塊を持って村を逃げだすのも、村人にこの取引のことを話すか否かも、プリン嬢に委ねられました。
結局は彼女は村人に取引のことを話すわけなのですが、物語を通して旅人、プリン嬢、村人それぞれの中で悪魔と天使とがせめぎ合い、時にどちらかが顔を出し、また時に他方がそれを押しとどめるという、人の心の善悪の揺らぎの姿が描かれます。
どの登場人物の立場にも、どこか共感できる考え方がある。
ストーリーの面白さと、考えさせられる思想とが上手く絡み合った作品。