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評価:
遠野りりこ
メディアファクトリー
コメント:私は平凡な女だから、風俗で働いている― 愛なんていらないから、ただ側にいてほしかった。それがせめて、朝顔が咲く朝まででも。社会の暗闇に転がり落ちた、平凡な女の痛いほどの心の叫びがつめこまれた作品。デビュー作とは思えないほどの完成度!
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短編(中編?)3作。
表題の「朝に咲くまでそこにいて」では、
ごく普通の社会人として働いていたセリが
ホストに嵌って借金をつくり、あっというまに風俗嬢へと姿を変える。
借金を返し終わっても、風俗で働くことを辞めない理由は、
「私は、こうでもしないとお金を稼げない平凡な女だから」
そんなセリはある日「先生」を拾う。
仕事と自信を失い、あそこもたたなくなってしまった中年の男。
それもまた、歪んだ愛なのかもしれない。
それでもセリは思うのだ。
先生、行かないで。
朝顔が朝に咲いたら、私を起こして―
2作目は、夫が蛙になってしまったお話。
3作目は、クールな女性が語る、恋愛依存症の女たちのエピソード。
どれもこれも、処女作とは思えないほどの出来栄え。
好きとか愛とか、言葉の上ではひとつのものとして存在しているが、
実存するそれはひとつとして同じものはなく、
またその言葉の中におさまっていると言えるものかどうかも分からないものばかり。
そういう曖昧さや歪みを、リアリティを含ませ提供してくれている。
愛は一歩間違えればホラーだ。
だけど例えホラーと化した愛でも、不思議と美しかったりもする。
そして性懲りもなく、何度でも恋に落ちていく。
女は忘れていく生き物だから、と作者は言う。
一度でも、恋に嵌ったことのある全ての女性に届けるメッセージです。
今後も注目。