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評価:
樋口 有介
文藝春秋
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高校2年の夏休みに、同級生の訓子が死んだ。
主人公の春一は、刑事の父親との2人暮らしをしている。
他人に無関心、クールな性格の彼は、同じく同級生のヤクザの組長の娘・麻子につれられて訓子のことを調べ始めたのだが、訓子には何か「隠したいこと」があったことが分かり・・・
というお話。
「青春ミステリー」という名前がこんなにぴったりくる作品は他にあるだろうか、という位爽やかなミステリーです。
特に主人公の春一くんのキャラクターがいいです。
麻子のようなキャラは、他の青春小説によくありがちなヒロイン像。
美人で、気が強くて、ちょっとわがままなんだけど、泣き虫。
ヒーローのありがち像といえば、ポジション的には「リーダーの親友」で、特別目立つわけじゃないんだけど、ちょっと世の中を斜めから見てるようなところがあって、ちょっと抜けてるところがあるんだけど、自分でも気がつかないうちに事件の真相の鍵を口にしてたりする(笑
(わかるわかる!!と思ってくれれば幸い)
ところが春一くんは父子家庭ということで、物語のしょっぱなから家事に追われています。追われてるというか、もう当たり前にこなしてます。お父様は何もいたしません。それでいて親子仲は悪くない。高校生の夏休み、受験生っていうわけでもないのに毎日のように参考書を開いている優等生かと思いきや、平然と煙草を吸い酒を飲む。どうやら学校に友達はいない模様で、本人はそれを意に介しておらず、しかしどうやら顔はイケメンのようだ。
いいねえ、この他人の気持ちに考えが及ばなくてそのことに気がついて反省するところなんて現代の若者っぽくていいね、なんて思ってたら、これ20年も前に出された作品て。私が思っていたより「若者」のありかたは変わっていなかったのか。それとも共感してしまう私が古いのか?
いやいや、そこは作者の筆力があるということで。
新装版にならなかったら、私はこの本と出会っていなかっただろう。
時代が変わっても色あせない物語はある。
どんどん教えて欲しい。出版社の方。ありがとう。
余談になるが、話の舞台に吉祥寺や中央線沿線の町が出てくることが多いような気がする・・・自意識過剰?知っている町が出てくると、リアルに場面が想像できて楽しいな。 映画館行くときに春くん探しちゃいそうw