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評価:
森岡 浩之
早川書房
(2002-03)
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短編集です。友達に借りて読みました。
うーん、面白かった。1度目はストーリー展開を楽しんで一気にぐあーっと読んでしまいましたけれども、2度目に落ち着いてゆっくり読んでみると、描写が少し稚拙かなぁという気もしました。だけど十分に魅力的なSFの世界。いくつか紹介したいと思いますね。
【夢の樹が接げたなら】
人工言語が流行始めた近未来。人々は現存の外国語をはじめ、新しく生み出した個人言語や社内言語を、直接脳にインプットすることで自在に操っていた。ところが、言語デザイナーである主人公はある日「ユメキ」という今までの言語とは全く異質の言語に出会う。「ユメキ」は天才を生み出す言語であった。果たして「ユメキ」は私たち人間をどのような世界に誘ってくれるのだろうか?
☆まず、この「ユメキ」という言語がとても素敵なのです。ユメキのような言葉が存在しそれを使って会話ができたなら。そんな素敵なことはないかもしれません。だけど、詩や俳句のようなものが生まれそれを楽しむことができるのも、曖昧さや、無意識にいろいろなものを言葉の中から省略している現在の言語のおかげなんですけどね。
【スパイス】
ある日全国を震撼させるニュースが流れ込んだ。ある男が、食物ように遺伝子工学で少女を培養しているというものだった。独占インタビューの権利を得た美樹は少女を救おうと意気込んで乗り込んでいくが、男の周到な計画とその結末が美樹を襲う。
☆「人間って一体何?」とにかくこの謎に尽きます。映画 A.I で取り上げられたテーマと一緒でしょうか。ううん、それよりもっと厳しい話だと思います。A.Iは完全な機械だったけれど、全てのDNAが解明された未来では、人間を人間の手で生み出すことが可能になってしまいました。全く人間と同じ素質を持った少女を、人間と認めるべきか?牛や豚を育て食べることに私たちは全く罪の意識を持たないのに、人間の手で生み出された少女を食べることの何が間違っているというのでしょうか。少女を人間と認めてしまったら、人間が人間を生み出せることになってしまう。神の力を人間が持ってしまうなんて。絶対に嫌。と思う一方で、知性も感情もあり、私と同じ言葉をしゃべる一個体を平然と食べられるわけもありません。食べたくない。耐えられない。だけどもし、平然と食べられる人がいたとしたら?うーん。いや、そこまでいかないとしても、培養された人たちはきっと人権を求めるでしょう。社会は認めるべきなんでしょうか。そして精子と卵子を合わせなくても命を繋いでいける世界を編み出すことが?
その他にも面白い作品が。
他の本も買ってみようかな、とも思ったんだけど
さっき調べてたら表紙がマニアックなアニメ的な感じで恥ずかしいかも・・・
買わないかも・・・・・