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評価:
村上 龍
集英社
コメント:皆がキョウコに恋をする。
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幼い頃にダンスを教えてくれたホセを探すため、キョウコはニューヨークへと旅立つ。
ホセの足取りをおってたどりついた先は、エイズ患者のためのホスピタルだった。
魅力的な女を中心とした物語、というのは小説に限らず映画なんかでも数多くみられる。
どんな風に魅力的か、というのはその作品によってまちまちだろうが、キョウコの場合は割りと正統派だ。
付加価値といえば、ダンスが上手いということ。
かわいらしい顔。
白い肌。
長い手足。
意思の強そうな瞳。
時々見せる悲しげな表情。
そんなキョウコに少なからずのオッサンたちが魅了され、無償でキョウコのために働いてしまう。
そんな魅力的な主人公に読者である私もやられてしまう場合もあるけれども、今回はイマイチ。
著者が村上龍だということに対する変な構えもあったかもしれないし、同じ日本人なのに日本人離れした白さや手足の長さを誇るキョウコに嫉妬したのかもしれない。
キョウコはイマイチ、だったものの、物語はなかなか良かったと思う。
キューバのダンスが物語りに彩りを与えているし、語り手が次々と変わるのでさらりと読みこせる。
終わり方もとても爽やかでいい。
ラストの、未来についてキョウコが思う、
「途上にいて、しかもそれを楽しんでいるとき、わたしは未来を手にすることができる」
という言葉になるほどな、と思った。