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評価:
北条 民雄
角川書店
(1955-09)
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著者の北篠さんは大正3年の生まれ。
20歳でハンセン病にかかり、24歳で亡くなられました。
「いのちの初夜」はハンセン病にかかり、ハンセン病専門の病院に入院することとなった主人公が見たハンセン病というものの姿を描いた作品。
ハンセン病が不死の病だったこの時代、その病気は伝染病であること、顔体が奇妙に変化していくことから人々からハンセン病患者は人々からの差別を受け社会から隔離されていました。かといって死ぬわけでもなく、体が異様な形になりながらも生きながらえる不思議な病。
眉毛が抜け、足が麻痺しあるいは切断し、盲目になり、鼻の穴がつぶれ、口がひんまがる。喉にあけた穴から息をする。
「ねえ尾田さん。あの人たちは、もう人間じゃあないんですよ」
「人間ではありませんよ。生命です。生命そのもの、いのちそのものなんです。−中略−ただ、生命だけがびくびくと生きているのです。なんという根強さでしょう。」
病気になった人が描くからこその、衝撃の作品。