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評価:
山崎 豊子
新潮社
(2002-11)
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白い巨塔全5巻、読み終えました。
短期間で読みふけってしまいました。(テスト前夜に・・)
ちなみにドラマや映画のほうは一切観たことないです。
一気に読み下せたということもあって、確かに物語の展開はうまいし、息のつかない緊迫感が十分にでていると思います。だけど正直なところ、少しだれました。というのも似たような展開が多すぎるから。またその展開〜?もう読んだよ〜。話の経過も結果も似たようなものなのに、逐一描写するからけっこう疲れました。
キャラクターの描写も上手いといったら上手いんだろうけど、それ以上に病院のありかたとか病気の説明とか、そういう部分が(しょうがないんだろうけど)非常に細かく、長くなってしまっているので、それと比較すると人物の感情面の移り変わりというところがあまり描かれていなかったように思います。
そうなると問題なのが、この小説は一体何を描いているのか、ということになる。個人的な見解からすると、この本の主役は財前でも里見でもなく、「白い巨塔」そのものに思えます。とすると著者はこういう白い巨塔の中にはびこる様々な問題を描きたかっただけ・・・と言い方は悪いけどそういう印象。
「白い巨塔」という言葉が本文中の中に数回でてきますが、それの使い方も少し不自然だと思ったし、本人に癌告知をしていない患者さんの家族のセリフで、同じ立場で前にでてきた家族とそっくり同じ言葉がでてきたし。書いたの忘れちゃってたのかな・・そこまで同じにしなくても、と少し思ってしまいました。
それから最後の財前の死に関しても、もう少し記述があってもいいんじゃないでしょうか。病院内の確執を十分に書いたから財前はさっさと死なせてしまおう、みたいな急いだ死だった気がします。癌専門医が癌にかかって死ぬのだから、解剖の際に若干のストーリーはあったものの、もう少し財前が何かしらの行動を起こしてもいいのではなかったかな、と思います。
あくまで小説なのだから、その面でもう少し楽しませてもらいたかったなと。