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評価:
吉本 ばなな
福武書店
コメント:夜の闇の中にはまってしまった女性たちの物語。文章が若い。
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福武文庫って。なんじゃい。
と思って調べてみたら。
現ベネッセコーポレーションだったー
「キッチン」が賞をとったのも福武書店刊行の雑誌だったんですね。
次の「うたかた/サンクチュアリ」も福武から刊行。
つまりは吉本ばななさんは福武から生まれ育っていったと。
知りませんでした。
息の長い作者の作品って、色んな出版社から文庫版が出るから困り者。
なるべくなら一番初めに出したところから買いたいとは思うのだけれど。
本作品は、「白河夜船」「夜と夜の旅人」「ある体験」の三部作。
いずれも、友人知人家族を亡くした女性が、自分でもそれと気がつかぬうちに夜の闇の中へと足を踏み入れていく時期を描いている。
そしていずれの主人公も最終的に、なんらかの、いわゆる吉本ばなな的な超常現象を経て現実世界へと戻っていく。
初期作品ということもあってか?文章がやや「もたもたしている」感あり。
でもそのぶんゆったりぼーっとしながら読める。
吉本ばななの作品は決して楽しくも面白くもない。
だが確実に現実から少し斜めにずれた空間へ連れて行ってくれる。
しばしの浮遊感を楽しみ、最後にはちゃんと地上にひょいっと立たせてくれる。
好き嫌いは多くあると思うし、私も続けざまに読むと少し疲れてしまうこともある。
小説の世界観を読後にひきずる私は、彼女の作品を読み続けていたら今以上にふわふわした人間になってしまうのではないかという不安を感じたりもする。
それでも未読の作品をみかけるとなんとなく手にとってしまうのは、何か惹かれるものがあるんだろうな。