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評価:
沼田 まほかる
新潮社
コメント:息子の突然の疾走を皮切りに、次々と佐和子の周りで不思議な事件が起こっていく。息子を追い続けて佐和子がたどり着いた場所とは。新しい「ホラー」の世界を見せてくれる1作。
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「ホラー」という言葉も、「サスペンス」という言葉も、今まで私がそれらに抱いていたイメージと照らし合わせてみると、この作品にはしっくりこない。ずれている。にも関わらず、読み終えてみると、これはまさに「ホラー」であり「サスペンス」だ!と実感する。
つまり私の中の「ホラー」「サスペンス」という言葉の領域を広げてくれた作品と言える。
「疾走」「謎の事故死」という言葉は「サスペンス」にぴったりとくる。
しかしこの作品で重要なのはその「謎解き」ではない。
「魔物」も「妖怪」も「凶悪犯」も出てこない。その点では「ホラー」ではないが、ものすごく「怖い女」というものが出てくる。しかしそれは清楚で穢れのないまっさらな女。多くの男を夢中にさせ、自分だけのものにしたいと思わせてしまう女。男の中の「理想のお姫様」とでもいうべき、「ホラー」という言葉の対極にありそうな存在なのだから不思議だ。
下手な例えだけれど、チープなドロドロの昼ドラを、昼ドラの面白要素を残したまま本格サスペンスに仕立て上げたという感じ?
昼ドラっていうのもある意味ホラーだしそういえば・・。
奥様世代にオススメ。