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評価:
ウィスット・ポンニミット
新潮社
コメント:タムくんが「今の自分を全部描いた」という、日本人の心に真っ直ぐ突き刺さる作品。
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ウィスット・ポンニミットの作品はとても好きだ!と思っていたのだが、漫画であるゆえにレヴューを書かずにいた。
だけどもしかし、あまりにも好きなのでやはり残しておこうと思う。
この本は特にどこかのコミック誌に連載されていたわけではない(と思う)し、コードが書籍だから書籍ってことでいいのかな。
ちなみにタムくんというのは作者の愛称で、イープンというのはタイ語で日本という意味。
初めて日本にきたタム君が感じた世界観を、無声映画のように描く。
ほんとうにセリフはちょっとしかない。それがいい。
例えばこんなストーリー。
人が川のように流れてきて、意味不明な言葉に溺れそうになる。
怖くて怖くて泣き出しそうになるとき、優しいおばあちゃんにお寿司をごちそうになって、そのお寿司屋さんを出た後はまた人の川が押し寄せてくるけど、タムくんは少し変わっている。
朝起きたOLは、箪笥をあけて脳みそを入れて、テレビと新聞を入れて、笑顔の仮面をかぶる。
仕事が辛いときは仮面がはがれそうになって、仮面の下からだらだらと汗をかく。
そして上司からセクハラを受けてキレて、胸パットと顔の仮面を上司に投げつけて会社を出る。
そして本当の姿になって、青い空を見上げる。
タムくんは言う。
「日本人は、仮面をかぶって仕事をする人が多いのかな。でも、自分にとってはよくないよー」
「いい顔してることが、絶対にいいことでもない。そんな簡単じゃないと思うんだ」
なんかすげー純粋なひとなんだろうなー!
そしてものすげー優しいひとなんだろうなー!
ってもう恋にも似たような気持ちを見たこともない作者に抱くくらいこの人の描くものが好きなんだ。
あんまり分かってもらえないけどさ。
これは図書館で借りたけど、やっぱり買おう!