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評価:
川上 未映子
文藝春秋
コメント:女という生き物が当たり前に持つ、乳と卵。3者の関係を新たな視点で見つめた作品。
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豊胸手術をする、と言って上京してきた姉の巻子。連れてきた娘の緑子はかれこれ半年も口を聞かずに筆談で会話をする子だった。
まず誰もが目につくのが、その独特な文体。ぐるぐるととめどなく頭を流れる思考を、わざと整理せずに言葉にしたようなそれ。
それが、徹底的に「女」しか登場せず、それも、「40代(30代?)独身女子の主人公」「胸の小ささと乳輪のでかさがコンプレックスの姉」「生理を前に女というものに嫌悪感を抱く姪」という、もうこれでもかという程、乳と卵子に密着したこの物語に異様にマッチしている。
ただ、この物語を読んだ後は、女として誰もが持っている(のではないか)、女特有のコンプレックスや嫌悪、を改めて思いだされるだけで、語り手であって特に問題がないように見えるポジションの主人公だって、いい年して家族もなくマンションに一人暮らし、仕事もそれほどうまくいっていないように見える・・・なわけであって、男が読んでもどう感じていいのか苦々しいお顔になるのだろうし、幸せ絶頂期の女が読んだら「なにこれーちょっとキモイ」てな感じだろうし、まして登場人物に多少なりともシンパシーを感じてしまう女が読んだら、もうこれはちょっと心が辛いわけなのでしょう。
↑ 若干文体を似せてみた
作者はずいぶんアーティスト気質なのかな?という印象。
壁を感じるわー