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未見坂
評価:
堀江 敏幸
新潮社
コメント:未だ見ぬ坂。未見坂。知らない場所なのに懐かしい。そんな不思議な町での、ショートストーリーズ。

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ジャケ買い。

未見坂という一見ゆるやかそうに見えて登ってみると実は結構きつい。
そんな坂がある町で暮らす人々の、はたまたなんらかの理由でこの町にやってきた人たちの、人生の数ページを切り抜いたような物語。

作者はとても生真面目な人なのではないか、という印象。
言葉を大事に使っていて、そこが好印象ではあるのだが、読んでいてまだまだ私には少し疲れるところもある。
そして読み終えて1日たった今覚えているのは、「余韻を残さない終わりが逆に余韻になって困った」という感想。
物語の終末というのは、しかるべくして終末に向かっていくというか、文体や雰囲気からして、ああゴールに向かっていっているなあ、という雰囲気を受け取って、自分の中でもその物語に対する別れの準備をしながら最後のページへと向かっていくことが多い。
短編といえど、最後の数行くらいには、そういった感じを受けることが多いし、そうでなくても読み終えた後に、うん、そうか、そういう終わりか。というのを飲み込めることが多いのだけれど。

この本に関してはなんだろう、全く終わった感じを出さない。
長編の始まりの1篇が終わりましたよ、という所で物語が終わり、また違う物語が始まってしまう。
え、心の準備が。と思う。

そういうことを受けて今思えば、この本は「町」を描いたものなのだなあということだ。
町は始まりも終わりも曖昧で、どこを切り取ってもなんらかの誰かの物語があって、しかしそれ自体は町という主人公のほんの一部分でしかない。

そしてこの町はど田舎でもなければ、都会というわけでもない。
それなのにどこか懐かしい、未見であるのに帰りたくなるような町なのだ。

地味だけど、いい本。





22:26 | は行(堀江敏幸) | comments(0) | trackbacks(0)

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