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評価:
モーパッサン
新潮社
コメント:原題 UNE VIE (人生)よりも、まさに「女の一生」がぴったりとくる。あまりに清らかで、あまりに弱かった、一人の女の侘びしい一生である。
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泣ける。
感動ではなく、悲惨すぎて。
題名の通り、1人の女の一生を描いた物語である。
ざっくりと追うと、それは「清らかに育てようという父親のたくらみで修道院で育ったウブな少女ジャンヌは、男を見る目を養わないまま結婚し、案の定新婚早々旦那の浮気が発覚し子供まで作ってもめげずにまた近所の奥さんと浮気をし、キレた浮気相手の夫に殺されてしまう。反動で1人息子を溺愛するジャンヌだが、成長した息子は女を作って家出し、金がないと言葉巧みにジャンヌからお金を巻き上げ、とうとう彼女は住む家すら売り払うことになる」という話だった。
これだけ読むと可愛そうな女性の話だが、そう簡単にはいかない。
ジャンヌの息子への傾倒ぶりが、病的というまでに異常で恐ろしい。
物語は「世の中は、人が思うほどいいものでも悪いものでもない」
という台詞でしめくくられるわけだが、ある意味ではその通りだと思う。
世の中を私は心の中で人生と置き換えたが、人生山あり谷ありという言葉があるように、
希望ばかりに満ち溢れているものでもなければ、苦難ばかりが待ち構えているというわけでもない。
しかしどちらを基準に置くかというと、私は幸福を人生の基本スタンスに置きたいと考えているわけで、
対してこの物語は真逆の道をたどった、非常にペシミスティックな作品だ。
基本が不幸で、その中にほんの少しの希望と幸福がある。そのために不幸の中を生き抜いていける主人公、といった構図だ。
女は清らかなのが良い、と謳われるが、やはり清らかなままでは女も男も長い幸せは掴めないのではないだろうか。
辛いことや不幸が身の上に起こったときにその悲愴レベルを下げるためには、時に自分ではない誰かをを悪者と認める図太さやずるがしこさ、我侭を通すことだって必要なんだろう。
なんてことを考えた。
幸せは歩いてこないから、自分の足で歩いてゆくんだね。