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評価:
町田 康
新潮社
コメント:とんだ「だめ男」を史上最高に可愛らしく描いた一品。
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あほが主人公の何ともあほらしい物語である。
と書くと否定的に捉えられるかもしれないのだけれども、町田康という人の作品を初めて読んだ私は、最初こそなんだこれは読みにくいなあわけわかんないなあ読むのやめちゃおうかなあ、なんて思っていたのだが、いつの間にか1冊をちゃっかり読み終わり、本を閉じた頃にはなんだか癖になるあほらしさだったぜ、と思うに至ったわけである。
とにかく史上最高に駄目な男がこの中にいる。
もう、それは、360度どの角度から見ても駄目な男で。
しかしその駄目さが、なんだか可愛く微笑ましく思えてくるのだ。
他の作品がどうかは分からないが、とりあえずこの本1冊の中では、全て主人公の語り口調というか、思っていることをリアルタイムでそのまま映し出したような文体になっている。
そこに時間の省略であるとか、季節や背景や他の人間がどうであるとかという説明がないものだから、否応なしに主人公の気持ちをたどっていくことになる。
そうするとずーっと主人公と一緒にいるもんだから、なんだか愛着がわいてきちゃうのだ。
駄目男なのにけっこう根は良い奴じゃん、とか思ってそのギャップにやられたりしちゃうのだ。
なんかすっかり駄目男に騙された気分。
でもやっぱり人におススメはしにくい作風。
個人的には他にも何か読んでみて好きかどうか見定めたいところ。
目次
夫婦茶碗 / 人間の屑