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評価:
辻内 智貴
小学館
コメント:家庭より仕事を選んで生きてきた勇一。大切な大仕事を前に父が倒れ、脳死状態に―。久しぶりの故郷の風が、勇一と家族の心に触れて流れていく。
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JUGEMテーマ:
小説全般目次
野の風/ 帰郷/ 花/ 愚者一燈 1995・夏
ちょっと重松さんっぽいなー。と思って手にした1冊。
これがなかなかの当たりでした!
家庭を顧みず仕事仕事で生きてきた勇一。
いつしか妻とは心が通わなくなり、1人息子は部屋に閉じこもり、言葉を交わすこともなくなっていた。
それが、父の危篤をきっかけにして仕事を離れ実家に帰り、家族と過ごす時間を持つようになり
勇一の心が少しずつ変化してく・・・。
という、王道ストーリー。
お、え、そうくる?!
っていう作品も、うまくいけばもちろんそれはすごく面白かった!ということになるんだけど
こういうシンプルで直球勝負なんだけど心温まる作品も、良いなあ。と感じた。
他3点はもう少し屈折していて、でもやっぱりシンプルで、
それでいて何か心の隅にひっかかる。
決して故郷に帰ろうとしなかった、亡くなった旦那の変わりに帰郷を決意した女性の話。
駄目な父親を見て育ち、男不信になった女性が、初恋に落ちた相手に騙された話。
仕事も結婚も考えず、無一文で安アパートで物思いに耽る39歳の男の話。
上手くいえないけど、なーんかひっかかるなあ、という作家さんだ。
「こういう作風」というつかみどころがないのだけれど、4編に共通していることといえば
物語の幕引きがとても潔くて心地良かった。余韻が残る。
他の作品も読んでみたいと思った。