|
評価:
荒井 良二
ポプラ社
コメント:絵本であり、小説である。物語であり、真実である。温かく、そして暖かい。誰のためでもなく、ただ一人の、全ての人のものになる本。
|
荒井良二さんの本が文庫になっていたので
見つけた瞬間かなりテンションあがりました。
私と荒井良二さんの出会いはかなり遅く、
数年前にクレヨンハウスで見かけ
絵に一目ぼれして母親に買ってもらった。
こんなに素敵な色なのに、母親も友達も、よくわからん、
といったかんじだったのが、私のほうがよくわからん、だった。
『クルヨ・クルヨ』は、「トーク・トーク」「ダンダント」「クルヨ・クルヨ」の全3話で編成されている。
ぼくは遠く遠くの町へ出かけて、いくつかの歌を覚え、きみに手紙を書く。
ものごとには、すべて始まりと終わりがある。
その中で楽しいことや辛いことがある。
ゆっくりとゆっくりと、終わりに向かっていくものだけれど
終わりと同時にまた始まりがくる。
終わりを恐れることも、始まりを焦ることもなく、
だんだんとでいいよ、と、人が、町が、鳥が、風が語りかける。
こんな絵本というのは、残された言葉や文字が
例えば血のように苦しい思いをして紡ぎだされたものだとしても
それを完全に完璧に覆いつくしたものであるから、
本当にずるい、と思うけれど、
だからこそ夢や希望や理想というものを信じさせてくれるものだから
私にとって大切な存在なのだと思う。
大人になってからのほうが、
絵本を読んでたくさん泣く。
人もキャンバスのようなもので、
塗りたくってぐちゃぐちゃになったそのうえを、
白色で塗りつぶしたいと願っているのが私なんだと思った。