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凍りのくじら
評価:
辻村 深月
講談社
コメント:他人をバカにしていた主人公の理帆子。自分を隠し他人と距離をとっていたはずが、気がつけば「人間」という現実の泥沼の中に足を踏み入れていた。ドラえもんの道具を使いながら描くスコシ・フシギな物語。

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小説というものはワインみたいなものかもしれない。
各々に飲み頃というものがあって、一番いいときに味わいたいと思うのだが
いつが飲み頃なのか、ソムリエには程遠い私には実際にコルクを開けて確かめてみるしか術はない。
それが間違ったと思ったとしても、一度あけてしまったワインは飲んでしまうしかない。

最近本の好みが変わってきたのかなと思う。
本書は私が読むにはもう遅すぎて、共感が出来なかった。
「本をたくさん読んできた」「進学校に通っている」という理由で、周りの人たちを見下す主人公。
藤子・F・藤子が言った、「僕にとってのSFとは”少し不思議な物語”なんです」という言葉に影響を受け、誰も彼もに「スコシ・ナントカ」という名前をつける傲慢さ。
スコシ不揃い。スコシFREE。スコシ憤慨。スコシ不安。
同年代の同級生を語彙力がないと馬鹿にする。自分だけが違うと思い込む。

そんな主人公、カケル、ドラマ的文体。
正直半分あたりまではちょっと苦しかった。
「ぼくのメジャースプーン」を楽しく読んだ記憶があったので、果たしてそれは私の本の好みが変わったからなのか、それともたまたまこの作者の中で好き嫌いがあったのか・・。
特に得るものはなかった物語ではあるが、漫画を読んでいるような感覚で半分をすぎたあたりからは違和感なくページをめくれたように思う。

昔は小説というものに対して、「いかに物語の中に没頭できるか」を重視していたように思う。
そういう本が私にとっていい本だったし、好きな本だった。
だけどいつからか、物語よりも言葉のつかいかたや、語られるひとつの真理に魅力を感じるようになっていた。
この本は私が今よりもっと視野が狭くて、自分のことばかり考えていた時に向いた物語だったのだと思う。
そういう時期や、個人個人の好みやなんやらがあるから、本の評価や推薦って難しいんだな。




23:07 | た行(辻村深月) | comments(0) | trackbacks(0)
ぼくのメジャースプーン
評価:
辻村 深月
講談社
コメント:帯の言葉、「私の自信作です」 この言葉に驕りなし!!うさぎを殺されたショックに言葉をなくしたふみちゃんのために、「魔法の力」を持つ少年が立ち上がる。人のため、自分のため、なんのため?復讐とは?正しいこととは?様々な疑問を投げかけ、心を揺さぶる一冊。

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いやーーー。ヒット!!!

やっぱり名をあげてる人はちゃんと実力あるんだよね
前々から気になってはいたものの、流行りに乗るものか・・・
という変な対抗心で読んでなかったんだけど(笑)
とうとう我慢できずに買って。
こんなことなら初めから意地張らずに買っとけーー!
って自分につっこんだくらい良い本だったな。


学校で飼っていたうさぎがばらばらにされて殺されて、
そのショックでふみちゃんは言葉と心を失ってしまう。
いつも正しいと思ったことをするふみちゃんを尊敬していた
「ぼく」は、「魔法の力」をつかって犯人に反省させようと試行錯誤するのだが・・・。


というストーリー。



「ぼく」に「魔法の力」の使い方とルールを説明する秋山先生とのやりとりが
深い深い。
「ぼく」にが犯人をどうやって懲らしめるか、を考える過程は
そのまま読者へ投げかける疑問だ。

悪いことをされたら仕返しをしていいのか?
それはどこまでならいいのか?
殺すのは?怪我をさせるのは?精神的苦痛を与えるのは?
復讐を成し遂げたらどうなるのか?
それで気持ちは晴れるのか?
自分の気持ちを晴らすために復讐をするのか?

うさぎの命は人と同じか?
食用のためなら殺すことは罪ではないか?
蚊は殺すか?蝿は殺すか?蝶は?カブトムシは?鳥は?うさぎは?




「人は、自分のためにしか泣けない」


誰かが死んで涙を流すのも、それはその人が死んだことが悲しいのではなくて、
その人を失った自分が可哀想だから。




「それの何がいけないんです?」

と秋山先生は言う。



「自分のためにその人間が必要だから、その人が悲しいことが嫌だから。
 そうやって、『自分のため』の気持ちで結びつき、相手に執着する。
 その気持ちを、人はそれでも愛と呼ぶんです」



こういう言葉を読めるから、読書はやめられないんです。
10:55 | た行(辻村深月) | comments(0) | trackbacks(0)

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