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カシオペアの丘で
評価:
重松 清
講談社
コメント:幼馴染のミッチョ、トシ、シュン、ユウちゃん。カシオペアを見上げながら夢を語り合ったときから30年、不思議な縁が彼らを再び結びつける。ゆるすこと、ゆるされることを描いた物語。

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幼い頃、一緒に星を見上げていた4人。
そのエピソードから物語りは30年という時を飛び越え、その間に起こった「何かたち」を匂わせながら話は進んでいく。

トシと結婚したミッチョ。
足が動かなくなっているトシ。
故郷に寄り付かなくなったシュンはガンに侵される。
一見変わらないようにみえる唯1人の人物、ユウちゃん。
さらに妻の浮気相手に娘を殺された川原さんや、車でおばあちゃんを撥ねてから運転が出来なくなったミウさん、鉱炭事故のことを何十年も心の内で謝り続けているシュンのお祖父さん。全員が心に傷を負っている。

この作品は彼らが傷に向き合い、自分を、相手を許してあげるまでの過程を描く。

最後のユウちゃんの語りの部分が良かった。
逆転勝利ばんざいっていうのが良かった。
過去に色んなことがあっても、その部分はかえられなくても、いまと未来が素晴らしいものなら、どんな過去があったっていいじゃないか、と。
この物語のように、過去の全てを受け入れて許して許されて、はいスッキリ!という風になるのはむずかしいことだと思うから、少しうらやましく、あと15年後には私もこんな風になれるだろうかと不安になったりもした。


感動作、である。
ただちょっと重松清は綺麗すぎる、と思うようになったのは、
また私の本の好みが変わってきているのかなあ。

21:09 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
卒業
評価:
重松 清
新潮社
コメント:いくつになっても、遅いなんてことはない。「ひとかわむける」、それぞれの卒業。胸を震わす4編。

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JUGEMテーマ:読書
 
また清に泣かされた!!

なんでだか分からないが、重松さんの書く文章は異様なまでに胸を打つ。
すごく読みやすく、小難しい単語や書き方をするわけでもなく。
でも「ふつう」じゃない「なにか」がある。
ただひたすら優しいのである。
ひとの気持ちが痛いほどに分かっているのである。

ひとりの主人公(中年男)の心情を追って物語を読み進めているはずなのに、
知らず知らずのうちに登場人物皆のそれぞれの痛くて切なくて優しい気持ちが手に取るように感じられてしまうのである。
なんなのでしょうこれは。

「死」と「家族」、そして「ゆるす/ゆるされる こと」をテーマに繋がった4編。
心のホコリを洗い流したいときにおススメ。



目次

まゆみのマーチ / あおげば尊し / 卒業 / 追伸

01:08 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
定年ゴジラ
評価:
重松 清
講談社
コメント:バリバリ働いて日本を支えてきたオヤジたちが、定年を向かえてニュータウンに放り出されたら・・?定年オヤジたちに送る盛大なエール。

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「熱血な中年」が重松さんお得意のキャラクターでもあるわけですが。
今回はちょっとくさすぎたかな?笑

物語は軽いコントドラマを見ている感じ。
短編が重なって長編小説となっているわけなんですが、一つのストーリーが終わる度に定年オヤジたちに愛着がわいてくるわけです。
初めは慣れないテリトリーであたふたしていた定年オヤジなのですが、なんとか自分の居場所を見つけようと散歩をしてみたり、友達を見つけて飲んで騒いでみたり・・
大人になってしまった娘に切なくなったり、世話を焼こうとしてめんどくさがられたり、
優しい奥さんになぐさめられたり、今熟年離婚されたらどうしようと不安になったり。

そんなオヤジたちでも「俺だってなあ、熱い想いがあるんだぜ!」ということを分かってもらおうとするんだけど
妻娘たちに「分かった分かった、お父さんの顔をたててあげますよー」という笑顔を向けられていたりとか。
あー、うちの父のポジションとなんとなく似てるなあなんて感じたわけです。
家族に男の子がいない家のお父さんって、どこもこんな感じになっちゃうのかな。
父を見ていても、もちろん尊敬はするし、仕事を頑張って家庭を支えてくれていることに対する感謝の気持ちは本当に大きいんだけど。
家の中で見る父ってどこか子供じみたところがあって、男の人っていくつになっても子供なんだなあ、なんて思ったりする。
こんなこと言うと怒られるから言わないけど、だから余計にお父さんが何か自分を大きく見せたかったりだとかする時は、男のプライドってやつを立てまくってあげられる。
内心「しょうがないなあ、男ってやつは」と思いつつ。

年端のいった男性がこの本を読んだらどう思うだろうか。
「そうそう、男ってやつはこうじゃなくっちゃ」と思うのかな。
まだまだ女としても未熟な私からしたら、可愛いオヤジだぜ、という気持ちで
にやにやしながら読みました。
まさに親の心子知らずってやつなのでしょうかね。


20:04 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
見張り塔から ずっと
評価:
重松 清
新潮社
コメント:人生に山と谷があるとするなら、谷を転がり落ちる夫婦のさまをリアルに描いた作品。

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JUGEMテーマ:読書
 

ここここ怖い!怖いよー。えーん。
ホラーじゃなく普通の話なのに怖かった。
怖いであれ、悲しい、面白い、等々、なにかの感情を相手に強く抱かせることができる人・仕事というのは、一流ということなんだよなあと思う。

将来に希望を抱いて購入したマンションの地価が3年後に暴落し、陰鬱な感情を抱く夫婦。
1歳の息子を亡くし、近くに同じ名前の息子を持つ家族が越してきたことで、一層悲しみの渦にのみこまれてしまう夫婦。
若くして妊娠・結婚したものの、マザコンの旦那と姑に責め続けられ、自らを「みどりさん」と呼ぶことで逃げ道を作らざるをえずにいる若妻。

どれも、もしかしたら誰にでも起こりうる「不運」や「不幸」を抱えた夫婦の話。彼らが体勢を立て直すことができずに谷底へと転がり落ちてゆくさまを、重松さんという「目撃者」が巧みに描き出すと・・・
まるで自分がその渦中にいるかのような気持ちになってしまい、ひとつの物語が終わる度に本から顔をあげて、ああ、私はまだ独身でしたまだ夢も希望もあります大丈夫です。。と自分に言い聞かせてしまうほど。

表題について、あとがきで作者自らこんな風に語っている。

   本書以降に発表した作品はすべて『見張り塔から ずっと』と名付けられてかまわない。
   このフレーズは、自分が小説を書くという営みそのものに対しての、
   おおげさに言えばマニフェストなのである。


すごいなあ、と思う。
物語を「うみだして」いるのではなく、本当にそこにあるものを「目撃」して「書き出す」という行為であるから、この人の書くものはこんなにもリアルで、だからこそ胸に響くのかなあと。

ハッピーエンドでない本はなかなか人に勧めることは難しいが、やはり低評価にするなんてことは出来ない力量。


目次

カラス / 扉を開けて / 陽だまりの猫
19:57 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
熱球
評価:
重松 清
新潮社
コメント:会社を退職し、故郷にもどってきた主人公。人生に立ち止まった中年男は、逃げ出した過去と20年ぶりに向き合うことになる。いくつになっても青春時代と同じように輝けるんだと、優しくときに厳しく教えてくれる一冊。

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久々に泣いた!
さすが重松清・・・

なんでこの人の書く本はこんなにも胸を打つんだ。
だいたい私はまだうら若き(とも言えないけど)乙女で、
この本に出てくる主人公のようにオッサンにもなっていなければ
人生に立ち止まったと胸をはって言えるような経験を積んでもいないただのガキなのに。

25でこんな物語に涙していたら、実際に40近くになったときにこの人の本を読んだら
もう私どうなっちゃうんでしょう。今から心配です。

物語自体は何が起こるというわけでもなく。

本当に99%運で甲子園の決勝戦に進んだ弱小チームのピッチャーだった主人公の青春時代は、決戦前夜の出来事で試合を出場辞退となったことで、苦いものになってしまった。そこから逃げるようにして上京したものの、長年働いた会社の経営不振を理由に退職を決意。ひとりになってしまった父親のいる故郷へと向かうが、故郷で一生を過ごす決断も、父親を置いて東京に戻る決断も下せないまま時は過ぎていく。

立ち止まる主人公の周りで、チームメイトや娘、さらには父親までが前へもがき進んでいく。
大事なのは勝ったとか負けたとかではない。
「ようがんばった」
そう誰かに言ってもらえるように、死力をつくすことだ。
人は歳をとるにつれて、格好悪くても頑張るということが出来なくなっていく。
でもそれは錯覚だ。すまして格好つけて、そんな風にしても生きていけるほど甘い世の中ではない。
大人は大人で、がむしゃらに突き進む青年とは違うやり方でも、必死に生きていくものなんだ。

がんばろう。
がんばろうーって思わせてくれる。
感謝だ。

18:28 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
くちぶえ番長
評価:
重松 清
新潮社
コメント:ツヨシの学校に転校生がやって来た。頭のてっぺんをチョンマゲに結んで、得意の一輪車でいじめっこを追い返し、夢は学校の番長になることだと言う女の子、マコト。2人が過ごした1年間の、短くとも忘れがたい友情の物語。

JUGEMテーマ:小説全般
JUGEMテーマ:読書
 
やっぱり重松清は最高!

「弱気をたすけ、強気をくじく」番長、マコト。
「弱い者いじめを見過ごして逃げるような子は、大っ嫌い!」
とマコトに言われたツヨシ。

いじめをしていなくても、自分に災いがふりかかるのを恐れてじっとしている。
それが仕方のないことだ、という考えから、そうじゃない、違うんだ、それじゃ駄目なんだ、
というマコトに背中を押されて、強い心を手にいれていく。

父を亡くして、体の動かない祖母の世話を任され、
少し早く大人にならなくてはいけなかったマコト。
「悲しくなったらくちぶえを吹くんだ」という亡き父の言葉を思い出し、
マコトは高い木のうえでくちぶえを吹く。


舞台は昭和の香りがする小学校であっても
力の強い者が力の弱い者を虐げ、力の弱い者はそれに耐えるしかないという構図は
人間社会の大から小からのこと全てに見られること。
だから番長が必要なんだなあ
力が強く、弱い者を助ける番長が。

さらにこの本の余韻をとても素敵なものにしているのは、
エピローグとプロローグにあるだろうな。
お話なんだろうけど、マコトは私たちの周りにもいるかもしれない、という
象徴的な存在として語っているのだろうけど、
それでももしかしたら、「ほんとうの」マコトが、この本を読んで重松さんに会いに行く
なんてことがあったら、なーんてことを妄想してしまったりもして。

そんなことが起こっていたらなんて素敵なんだろう!
ということも含めての作品だと思うので
ほんとうのことは知らなくていいな。

17:23 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
疾走
評価:
重松 清
角川書店
コメント:疾走―。物語を楽しもうと思うなら、この本は手にとらないほうがいい。自ら選び取ったわけではない運命を背負わされた少年の迷走。あまりにもリアル。

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JUGEMテーマ:小説全般
 
天才―。
この言葉は使いたくない。
だって誰しもが、生まれ持った才能だけで生きているわけではないから。

だけどこの本を閉じて、いや閉じる前から、脳裏を走ったのはこの言葉だった。
重松清さんという人は、、、。


ありふれた、どこにでもいるような1人の少年が、兄の精神的崩壊をきっかけに
本人の意思とは関係なく暗闇の世界に誘われてしまう。


「孤高のひとり」になりたい―
でもほんとうは、「ふたり」になりたい―
だけど誰も、そばにいてはくれない―

少年の苦しみが、切実な叫びが、願いが、文章中からあふれ出てくる。
誰か、シュウジを助けてあげて。そばにいてあげて。
そう思わずにはいられない。
だけどいくら思ったって、物語の結末はすでに描かれてしまっている。
私はそれをたどることしか出来ない。


作者の筆力、作品の出来という点から見れば、
当然のように星は5つの評価になるだろう。
だがそのあまりのリアルさ、苦しさゆえに、私は5つ星をつけることができない。
やっぱり人におススメする本は、心があったかくなる本がいいから。


それに、ひとつだけ、ひっかかることがあるとすれば、
この結末。(結末書くので未読の人はスクロール禁止)

















「殺人を犯した主人公は最後に死ぬ」

このパターン、ちょっと多すぎる。
青の炎もそうだったけど、殺人を犯す主人公というのは、
大概が殺人を犯すにいたるまでが、とても可哀想。
ああ、こういうことがあったら殺人を犯したくもなってしまうなあ・・・
と思わせるまでの理由がある。
だけどもちろん、だからといって道徳的に物語の結末を、警察に捕まらずに
以後幸せに暮らしました、っていうことは出来ない・・・のかな。
それで主人公を死なせてしまえば、誰も主人公をもう責められない。
それが、ずるい、と思う。
なんか違うんじゃないかな、って。それでいいのかな?って。

殺人犯の主人公が死ぬ話を読むと、ああ、またか。
って思う。
やっぱりな、とも。

現実には、そんなに都合よく死ねるものじゃないと思うから。



とはいえやっぱり、すごい作品だった。




10:12 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
流星ワゴン (講談社文庫)
死んじゃってもいいかなあ、なんて思ってた僕の前に、
5年前に交通事故死した父子の乗るワゴンが現れた。
ワゴンは時空を越えて走っていく。
たどり着くのは「僕にとってたいせつな時」
あの時こうしていたら、あの時あんなことしなければ、、、
その時に戻れても過去は何も変えられない。

「分かれ道は、たくさんあるんです。でも、そのときにはなにも気づかない。
 気づかないまま、結果だけが、不意に目の前に突きつけられるんです。」

辛いことって目をつむりたくなる。
自分が加害者になってしまったような時は特に。
人間ってずるい。

これは名作です。ほんとに。
22:44 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)
四十回のまばたき (幻冬舎文庫)
売れない翻訳家である圭司の妻の妹、耀子は冬になると「冬眠」する。冬眠の季節になると圭司夫婦が耀子の世話をしていたのだが、あるとき妻が交通事故で亡くなってしまう。妻の不倫を知り泣くことができない圭司のもとに、冬眠の季節を前に耀子がやってきて一緒に暮らすことになるのだが、耀子は妊娠しており、圭司に赤ちゃんの家族になってほしいと言う。

流星ワゴンの衝撃には劣るものの、またしても感動させられた一冊。重松清は誰もがもっている人間の弱い部分、他人に見られることを恐れ、自分でも目をそらして生きていこうとしてしまうような部分を透明な剣で突き刺すような物語を書く人だと思う。
そして本作では、「穴ぼこ」について語っている。アメリカ人作家「セイウチ」が語るこの穴ぼこの話がとても素敵なのだ。なにかが欠けてる人間っていうのは、どうしてこんなに哀しくて、こんなに美しくて、こんなに素晴らしいんだろう。
1人で完成している、と言われた圭司でも、穴ぼこが空いていないわけではなく、漆喰塗りが上手いだけだった。何を誰に伝えるでもなく、それでも自分はここにいる。ここにいれば、いろいろなことがあって、自分の中の何かを変えていく。
でもそれにはまず、自分の穴ぼこを見つめることが必要なのだ。きっと。
23:34 | さ行(重松清) | comments(0) | trackbacks(0)

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