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遠い山なみの光
評価:
カズオ イシグロ
早川書房
コメント:カズオ・イシグロのデビュー作。他作品にも見られる、ある種の郷愁や悲しみにふんわりと包まれた本作。死という強烈なイメージに引っ張られながらも、戦後という大きな時代の変わり目に生きる人々の苦しみと葛藤を描く物語。

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JUGEMテーマ:小説全般
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19:53 | 海外(カズオ・イシグロ) | comments(0) | trackbacks(0)
好かれようとしない
評価:
朝倉 かすみ
講談社
コメント:恋に不器用な女性たちへ。

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いまどきめずらしい、うぶな少女、風吹。
メイクもオシャレもよくわからない、男性経験は好きでもない男との一度きりだけ。
すぐ真っ赤になる顔がコンプレックスで、小さい頃のあだ名は「ゆげ」。
そんな風吹が恋をしたのは、ベリーダンスの先生と不倫をしている鍵屋だった。

朝倉かすみにしてはめずらしく(?)爽やかな物語。
恋とはなんぞや、を語る、女子的「あるある」「わかるー」がちりばめられた話。

主人公風吹の大家のおばあちゃんがとてもいい。
齢70を越えても、彼女の仕草は「女」である。
そして格言は彼女の口から多くが語られる。

「あれこれ思うは人の心、ふっと思うは神の心」
「自分を愛しいと思えない女になにかを期待するひとなんて、いない」
そして、「好かれようとしないこと」

男の人には申し訳ないけれど、やっぱり男って単純でおばかさんだと思う。
「彼を振り向かせるテクニック」なんて腐るほどあって、「彼を振り向かせるメイク術」なんてものもあって、
なりふりかまわなければ、自分の見た目やら相手のステータスやら諸々を妥当な線で考慮すれば、「彼」を「振り向かせる」ことはさほど難しいことじゃないと思う。
でもその彼のことがほんとうに好きで、その彼にほんとうに自分の全てを好きになってもらいたいと思ったら、そういうテクニックではどうしようもない。
恋に落ちるのは、「ふっ」と思ってもらうしかないからだ。

やっぱり恋は、「する」ものではなくって、「落ちる」、もしくは「出会う」という言葉がしっくりくる。
赤い糸や運命なんて言葉は恥ずかしいけど、恋に落ちる人には落ちる、振られる人には振られる、そういうことはもう決まってるんじゃないかなあと思う。
だけど仲良くなるための、お互いを知り合うためのきっかけを作る勇気は必要だ。
ということを風吹に教わった。
やっぱりすれ違っただけじゃ恋なんてうまれないもの。




22:58 | あ行(朝倉かすみ) | comments(0) | trackbacks(0)
KYOKO
評価:
村上 龍
集英社
コメント:皆がキョウコに恋をする。

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幼い頃にダンスを教えてくれたホセを探すため、キョウコはニューヨークへと旅立つ。
ホセの足取りをおってたどりついた先は、エイズ患者のためのホスピタルだった。

魅力的な女を中心とした物語、というのは小説に限らず映画なんかでも数多くみられる。
どんな風に魅力的か、というのはその作品によってまちまちだろうが、キョウコの場合は割りと正統派だ。
付加価値といえば、ダンスが上手いということ。
かわいらしい顔。
白い肌。
長い手足。
意思の強そうな瞳。
時々見せる悲しげな表情。
そんなキョウコに少なからずのオッサンたちが魅了され、無償でキョウコのために働いてしまう。

そんな魅力的な主人公に読者である私もやられてしまう場合もあるけれども、今回はイマイチ。
著者が村上龍だということに対する変な構えもあったかもしれないし、同じ日本人なのに日本人離れした白さや手足の長さを誇るキョウコに嫉妬したのかもしれない。

キョウコはイマイチ、だったものの、物語はなかなか良かったと思う。
キューバのダンスが物語りに彩りを与えているし、語り手が次々と変わるのでさらりと読みこせる。
終わり方もとても爽やかでいい。

ラストの、未来についてキョウコが思う、
「途上にいて、しかもそれを楽しんでいるとき、わたしは未来を手にすることができる」
という言葉になるほどな、と思った。

21:37 | ま行(村上龍) | comments(0) | trackbacks(0)
猫鳴り
評価:
沼田 まほかる
双葉社
コメント:沼田まほかる、猫を書く。

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捨て猫モンちゃんと、彼に関わった3人の人間のお話。

相変わらず沼田まほかるは、人の心のどろどろとした部分の描写が非常にうまい。
あああああもうそれ以上書かないで説明しないで分かってるからあああああ
と叫びだしたくなる。

人には見られたくないとついつい思ってしまう、そして隠してしまう気持ち。
しかしそんな気持ちが「後ろめたいこと」だなんて、誰が決めたのだろう?
心の隅々まで「綺麗」(社会にはびこる観念としての)な人間なんて、この世には存在しないかもしれないのに。

そんな風に必死に隠そうとしている心を、全て見透かしているかのように思わされるのが、猫という生き物。
全てを知っているようで初めは恐ろしいが、知られているということで逆に心が解放されて楽になるということもあるのかもしれない。

文章はうまい、と思うが、どうやって楽しんだらいいのかよくわからない本だった。
21:20 | ま行(沼田まほかる) | comments(0) | trackbacks(0)
彼女がその名を知らない鳥たち
評価:
沼田 まほかる
幻冬舎
コメント:人が狂える理由は、愛以外にないのかもしれない。

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昔の彼・黒崎を忘れられない主人公の十和子は、寂しさから15歳年上の陣冶と暮らしている。
下品で貧相で下劣で卑屈で・・・激しい嫌悪感を陣冶に抱きながらも離れられない十和子だが、デパートの時計売り場の係長・水島と不倫関係に陥る。
その直後から水島の周りで不可解なことが立て続けに起こり、十和子は陣冶の仕業ではないかと疑う。
十和子を手放したくないあまりに、狂ってしまう陣冶。哀れな陣冶。
そしてラストに示される、衝撃的な愛の形。


沼田まほかるは怖い。
あ、と気がついたときにはもう底なし沼にずっぷりとはまっていて抜け出せなくなる。
本を閉じたあともしばらくはこの陰鬱とした気持ちから抜け出せそうにない。
沼田まほかるが差し出す愛の形は、ひどくおいびつな形に歪んで狂気じみている、にもかかわらず、普段は隠されている部分から「共感」をかすめとっていく。
沼田まほかるの本を「つまらない」「気持ち悪い」と放り出すことが出来るならば、それはまだまだ若いことの証か、よっぽどの幸せ者か、はたまたぶりっ子か。
彼女の本が売れているという事実になんだか胸をなでおろす思いだ。

全員、狂っている。
十和子も、陣冶も、黒崎も、水島も、姉の美鈴と、もしかしたらその夫の野々山も。
(唯一の光がカヨかもしれない。カヨが出てくるシーンだけが温かい光をはなっていて印象深い)
しかし、狂気を含まない愛など有り得るのだろうか、と思い、「愛は素晴らしい」などと声高に叫んだりしない作者のことが、イイナ、と思ってしまうのである。



22:11 | ま行(沼田まほかる) | comments(0) | trackbacks(0)

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